2013年10月20日日曜日

うつろい

先週半ばくらいから、寒くなって来た。
それでも13度前後。
マルティニーク育ちのMagaliは、
冬で20度という経験しかないから、
彼女にとっては極寒に入る温度だ。
着る服もないから、様子見で買い足しているらしい。

金曜日朝には、霧が出た。
50メートル先は、見えない。
頬さす程度のくらいの寒さだから、
歩けばまだまだ絶えられる冷たさだ。
私には身が引き締まる心地よい寒さだ。

朝、Gard de Nord近く。


学校帰りにクラスメートのFabienne(ファビエンヌ)に付き合って、
Republique(レピュビュリック)まで
世界堂みたいな文房具屋さんへお買い物に付き合う。
彼女は地図が読めないから、説明するのが酷で一緒に行った方が早い。

何が欲しいかって、
砂消しゴムが欲しいんですって。
私も買う物があったし、ちょうどいい。

学校から15分程度の距離にあるそのお店までの間、
他愛ない会話がつづくのだが、
人にお願いしている割に、
気分が悪いから早く帰りたいから、どのくらいで帰れるのかとか聞いてくる。
自分勝手な発言に驚きを隠せない。

と思いつつも、気分悪いなら、自分も早くしなきゃと思い、
優柔不断な私が、とりあえず自分の欲しいパステルを即決した。
傍ら、彼女は砂消しゴムはもちろんだが、
予想通り、他の物に目が行き、
時間を気にしている彼女が一番買い物が長かったりする。
どーぞ、どーぞ。
好きなだけ見て買ってください。

待っている間に、視界に入ったCopic(コピック)集団。
パースやデッサン用に使われる着色ペンだが、こちら日本製。
アニメーターにもよく使われている。
店の中でも中心に位置するCopicは、
店の扉を開くと真っ先に目に飛び込み、異様な存在感を放っている。

「私、Copicですけど?クォリティは最高よ。だって日本製だもの。」
1本800円くらいする。高いよ!
日本だと1本350円前後だった気がする。
1本くらいならいいけど、
グラデーションを付けるために最低でも3本は必要だから、
それだけでも価格に大きな差が開いてくる。

日本製がいいのかどうなのかわからないが、
確かに私も会社勤めのときは何も知らずこれ使っていたし、
パースのクラスでも美術大を出た先生がコピックは一番良いと言っていた。
なんだか嬉しい。自分が褒められたような気分だ。(全く関係ないけど)

余談だが、その先生がとても実用的だと勧めたパースの書き方本が、
長谷川矩祥(はせがわのりよし)氏の本だった。
彼はハウジングエージェンシーでパース講座を持っている先生だ。
ボザール(美術大学)を出た先生がフランス人のパース本ではなく、
日本人のパース本を勧めるとは…!!
なんだかこちらも嬉しかった。(全く関係ないけど)
私以外のクラスメイトのほとんどが買っているので、いい売上になったはずだ。
ちなみに価格は嬉しくなかった。


で、
結局Fabienneの買い物が終わって、外に出ると、
曇っていた空が一転、青空に。
夕日がRepublique周辺の建物を照らし、
なんとも言えない色並みを見せてくれる。
表情が豊かな街です。

夕日が焼き付けられるRépubliqueの建物


これを見たFabienneは、気分が良くなったらしく、
この後(他のお店で)買い物しない?という発言をした。

おやおや、
天気も彼女も移ろいやすいことですこと。




2013年10月13日日曜日

ジャブ

先週、テキスタイルのJAB(ジャブ)ショールームに
授業の一環として皆で行って来た。
メトロSentier近くのRue de mail沿いにある。

そしてこのRue de mailは、
名を持つテキスタイルブランドが軒並みそろえる、
インテリアデザイナーにはとても興味深い通りである。
心が踊る通り。


朝10時集合のJABまで家からもちろん歩いた。

集合時間ギリギリなのに、途中で出会ったジェレミーは、
急いでいるにも関わらず、
寒いから一杯コーヒー飲んで行こうという。
そんな呑気さが好きだ。
でも私は彼を引っ張って、JABまで急いだ。
その後ちょっと迷ったから、
コーヒーなんて飲まなくて良かった。


すべてに共通して言えることだが、
同じブランドでも日本のショールームとはやっぱり格が違う。
置いている物は同じなのに、空間の使い方、いうなればインテリアが違う。
ちなみに日本では広尾のナショナルインテリアが正規代理店で、
ここにもM社にいたときに、研修に行っている。
F氏にお世話になったなぁ。なんて、振り返りつつ。


A氏のシャツはどこで買ったのか聞きたかった。。。

今回説明をしてくれたのは、写真にうつるおひげの濃いA氏。
言ってることは半分くらいしかわからないけど、
話し方といい、
着ているシャツといい、ジャケットといい、
上品でセンシティブなステキな人でした。
ついでに、もみあげ下側に、
私と同じ渦(私の場合は産毛)ができていたので、
とても親近感がわいた。
あんまりいないよ。



話の展開は、商品を見せながら、
繊維の特徴を教えてくれるやり方。
まぁ、こんなもんだと思っていたけど、
やっぱりステキなテキスタイルを目の前にすると、
みんなうっとり。



地階には、大きなリラックススペースが。
みんなここでどーんとお尻をおろし、
アンケートを書きました。

やることは、どこでも一緒だな。

この間、見積りの作成方法を習った。
やっぱり個人でやるのと組織でやるのとは訳が違う。
ボリューム満点。
ただ、フランスは個人や小さなインテリアデザイン事務所が多いから、
その人たちをアシストする積算・発注方法等が結構あるようだ。
このJABもその一つ。
とりあえずフランス流を学んでおくか。

心揺さぶるカーテンの生地を目の前にしても
積算と発注のことが気になってアタマがいっぱい。

その後は、近くのブラッスリーで、
久しぶりのお肉、
La bouef rôti burguignon(ローストした牛肉を煮込んだもの)を食べて
元気回復。
雨の中を家路に着くのでした。



2013年10月11日金曜日

タタキィ

この間、Emmaとサンマルタン運河近くのLe verre voléというお店に行った。
いつも私は彼女にお店選びを任せてしまっている。
なにせ彼女は、パリ暦10年。
そんじょそこらの私では太刀打ちできない情報を持っているからだ。

暗すぎて見えないですね。


パリには珍しく2時間制のそのお店は、
予約なしでは入れないお店だった。
そんな事情は知らない私は、
何不自由なくお店に入って、
Emmaの後ろ姿を確認して、
「Bonsoir, Emma, ça va?」と言う。
 ひとたび着座すれば、入り口から人がどんどん来るのが見える。
そしてその8割方が追い返されていて、よく聞いてみれば、
21時半まで待っていただければ…と言われている。
どこかで聞いたこのあるセリフ。
そう、恵比寿のもつ鍋「蟻月」。
よく待った…なぁ。

さて、なぜこのお店が人気があるかというと、
la cuisine Franco-japonaiseにある。
日本人シェフがいて、フランコジャポネ料理をつくる。
彼は有名らしい。
彼がいない日もあるらしく、
彼がいない日の料理はまずいといって帰る人がいるようだ。
彼の名前はわからないので、彼にする。
(聞いておけばよかった。)

カウンター越しの彼。

彼の Tataki de Bonito(タタキドュボニート)を食べた。
かつおのタタキ。

Servantの「タタキィ」
Emmaの「タタキィ」
私の「タタキ」

前者 フランス語発音でタタキは、とってもかわいらしい食べ物に聞こえる。
英語のトゥナ(ツナ)みたいな。
だけど、タタキを音だけで聞くと日本語では強そうな。
その矛盾が私には面白く思えた。

タタキィは手前。
そして味はというと、もちろん美味しい。
酢醤油ニンニクでなく岩塩と、大葉でなく香菜とで食べる。
日本で食べるより、柔らかくて肉厚で、マシュマロ食べてる食感。
で、この塩がかなりヴィヴィッドに鰹を生き返らせていました。
私がこの塩のシオさ加減に驚いていると、
Emmaはすかさず、
「これ南フランスの塩だと思う。」
「すごい!さすが料理人の娘。そこまでわかるか。」
と、こっちにも驚き。

ちなみに付け合わせのマッシュポテトみたいなこのお料理。
セロリ入りマッシュポテトでした。
これがまた合う。
そしてビールじゃなくて、
赤ワインが結構合う。
タタキィ フランコ ジャポネー、エキゾティック。


私たちの後に入って来た隣のマダムたちも、
私たちの高い声を聞いて、タタキィ頼んでました。
いや、ホントにこれ美味しい。

シーフードなんて、ツナ缶くらいしか食べてない。
やっぱり、魚美味しいなーと心を郷里に戻していると、
魚久の銀ダラ西京焼が急に食べたくなった。
Ça me manque bien.

負けじと、ここでしか食べられないもの食べて行きますから!
ちなみに、このお店は、目黒にも出店しています。
よろしければ→コチラ
彼は、パリで料理していなときは、目黒でしているかも。
彼のタタキィ、食べられるかな?

















2013年10月7日月曜日

30の終わりに…part2

「アロー?マダム○○?ジュゥスイクニコ。
部屋に鍵を忘れたまま、家を出てしまって、部屋に入れなくなった。
マダムがいなかったので、いつ帰ってくるのか知りたいのですが…」
「オー、パ ボン ヌーベル(よくない知らせね)。
 今、ロシアなの。日曜の夜に帰るのよ。どうしましょう。」
「えーーーーーーーー?」

言葉をなくす。
 ロシアですか??それは遠くにいらっしゃりますねぇ。
んー着の身着のままで、お金も持ってないから、
どうしよう?色々なことがアタマをよぎる。

「ちょっと近くに住む(といってもパリから400キロ)姉に頼もうかしら。。」
など色々とマダムのアイディア発言が続く…しかし結局、
「また10分後くらいに掛け直すわ!OK?」
マダムに頼るしかない。
私の大事な週末の行方。
マダムの次の電話を待つまで、
レントゲン写真でドアを開けるシミュレーションをした。
「鍵でも開けるの容易じゃないのに、これで開くのかー??」
しかし、方法があるなら、それでもやるしかなかった。

マダムから再度着信。
「アロ?gardienneが私の家の鍵を持ってるから、それで一緒に入って
あなたの部屋の鍵を取りに行きなさい。玄関脇の棚にあるから。
10分後にgardienneのところに行くって行ったから、急いで行って!
もし場所がわからなかったら、また電話して。急いでね!」

オー、マダムありがとー。
それ、とってもシンプルでボニデー(bonne idée:グッドアイディア)です。
Emmaにお礼を言って、
とりあえず家に急いで向かう。
後は、もうその指示通りで難なく鍵発見。
落ち着いてお部屋に入れました。
結局お家に入れたのは、22時半。
Emma、マダムにお礼のメッセージを送り、
それだけでもう疲れてしまってベッドにバタン。

31歳の朝は、自分の部屋で、いつも通り、
ヨーロピアンな香りを嗅ぐことができました。
ふー、シャワーのお湯がでないとか文句言わないでよかった。
またもや皆様に助けられた私でした。
ふぅ。









30の終わりに…part-1

金曜日の夜はコインランドリーに行く。
土日は、最大限休みたいし、
休みの朝に、部屋干しした後に残る洗剤のやさしい香りが
気持ちを安らかにしてくれるからだ。
コーヒーとこの洗剤の香りが混ざると、
私にとって、とてもヨーロピアンな香りとなる。
結構、このポイントは外せない。

そして今週もいつも通り、
コインランドリーに行き、
終わる時間を見計らって、取りに行こうとした。
そこで事故が起きた。

「ガチャン」
「???」
おっとー、鍵を閉めようにも鍵がない。
こちらの玄関は、ホテルと同じように、オートロック。
その上でさらにロックをかける。
やってしまった。鍵がない。
完全にLOCKED OUT。

でも落ち着いて下に住む大家さんマダムのところに。
そうそう、彼女が鍵を持っている。

階段を下りて、彼女の玄関ドアを見ると少し嫌な予感がした。
土汚れをとるヤシ製玄関マットの下に、
朝10時に配られるお手紙群が白い姿を見せていたからだ。
金曜の朝に、早くから出て行って、
夜8時にいない…ってもしや旅行か???

そんな予感を持ちつつも、わずかな期待をして、
インターホンを鳴らす!
ならす。
ナラす。。。
ノー…、でない…。やっぱり?

洗濯物を取りに行くだけの私は、小銭入れしか持ってない。
アタマをフル回転させて、まずは洗濯物を取り行くことにした。
洋服達を置き去りにはできない。
そしてまた戻り、暗い階段に座ってこの先を考える。。
まずは、gardienne(ガルディエンヌ:管理人)に鍵を持っていないか聞こう。
んー軽くあしらわれた。
「鍵?持ってないわよ?マダムに聞いた?私は知らない。」
頼りにならない管理人。

とにかくマダムに連絡をとろうにも携帯もないから、
近くに住むEmmaのところに行くことにした。
Emmaの家に行ったことがあるから、幸いにも夜訪することができた。
エレベーターなしのアパートを7階分まで息を切らせながら、
期待を込めて上る。
そしてインターホン。ならす、ならす、出ない。
ふううう。
夜8時30分にいないとなると、彼女は食事に行ってるかなー。
いつものパターンだと10時半すぎでないと帰ってこない。
2時間は待つな…。
ということで、気を取り直して階段を下りて、アパートのパティオで座り、
団らんで漏れてくる暖かい声を耳にしながら、
共有玄関ドアが開く度にEmmaー!と心の中で叫んだ。

15分くらい経った頃、なんとEmmaが現れた。
Emmaーと声に出して叫んだ。
もちろん、Emmaは私がいることに驚く。
彼女は落ち着いて話を聞いてくれたけど、
ファイルで玄関ドア空くよ?というわけのわからないアドバイスをくれた。
やったことがわからないから、どうやるのか分からないから教えてと聞くと、
youtubeにアップロードされているレントゲン写真を使った鍵の開け方を見た。
しかし素朴な疑問。

「レントゲン写真ないでしょ??」
「J'en ai un.(持ってるよ。)」
「え?」

そう、フランスでは個人で保管するらしい。1回撮るのも高いから。
もう状況が状況だけに、マダムに連絡してダメだったら、
じゃあ、やってみるかということに。

そしてマダムに運命のコール。
ツーーーー、ツーーーー、ツーーーー。